クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい

（デートとして扱ったら、もう……疑えなくなる）

　これまでギリギリのところで雪乃さんを信じずに過ごしてきた。一度受け入れてしまえば、再び裏切られたと知ったときに立ち直れなくなる自信がある。

　最初の一度目でさえ、打ちのめされたように感じたのだ。
　初めて心惹かれた人が自分との結婚を狙って策を練っていた。一条の名前を出し、何者であるかを伝えてしまったせいで、あの夜に感じた奇跡を泥で汚されたような気になってしまった。

　接し方がわからないまま、今日まで迎えてきている。それでも彼女が同じ空間で生活しているというだけで胸が騒いだ。
　今も俺は、彼女に惹かれる気持ちを抑えきれない。

（信じたくないわけじゃない。……いや、信じたくないのか？　もう自分で自分のことがわからなくなるな）

　橋本が微かに身じろぎした。
　顔を上げると、いつの間に用意していたのかコーヒーを差し出される。

「少し、休んでは」
「……悪い」

　淹れたての熱いコーヒーを口に運び、気持ちを落ち着かせようとする。

「……ちょっと相談してもいいか？」