「速いなぁ。」


感嘆するような久保くんの声。


「伊達に、神奈川三羽烏なんて呼ばれてないね、やっぱり。」


と私。


「確かに。僕なんかはこれから入部させて下さいって、頭を下げるんだけど、彼はもう春休みから練習に当たり前のように参加してるんだから。レベルが違うよ。」


彼の名前は白鳥徹(しらとりとおる)。中学時代から、その名前は県下に聞こえていた。その白鳥くんの進路は、当然注目を浴びたが、やはり高校時代ピッチャ-だったお父さんの母校である明協を選んだのは、自然だったんだろう。


容姿端麗にして、高校入学早々のこの時期に、既に140キロを優に超えるスピ-ドボ-ルを投げる才能。それに加えて、お父さんはリゾ-トなどを手掛ける大きな企業の社長さんで、つまり御曹司。これじゃ女子がほっとかないよね。


「すげぇな。ウチで女子がキャ-なんて騒ぎが起こるなんて、考えたこともなかったよなぁ。」


なんて言ってる先輩の声が耳に入って来る。


「まぁ、僕みたいなその他大勢の選手とは、住む世界が違うけど、なんと言っても彼は僕達にとっては同学年の仲間。心強いよね。」


そうか、白鳥くんは仲間なんだよね、って今更気付く私。


「とにかく、いよいよ始まりだね。いろんなことの。」


「そうだね。どんな3年間になるのかな・・・。」


私達はそんなことを話しながら、しばしここでここで時を過ごした。