With you~駆け抜けた時・高1 春&夏編~
GWが過ぎ、少ししてやって来るのは中間考査。1週間前になると、部活も休止になり、私達学生の本分が何たるかを、否が応でも思い知らされる。


陽が明るいうちに、家に帰れるなんて、なかなかないから、ちょっと戸惑いながら、私は机に向かう。


「そう言えば、入学直後の学力診断テスト、みどり10位だったよね。」


「あれは、たまたまで・・・。」


「またまたご謙遜を。」


「本当だよ。部活が忙しくて、あんまり勉強もしてないし、正直不安いっぱいだよ。」


そんな会話を少し前に、美怜と交わした。中学時代は、それなりにちゃんと勉強して、ある程度自分の学力に自信があったのは確かだけど、高校に入ると、勉強の難易度も上がってるし、勉強時間が中学の時に比べて、減っているのは自覚している。


(時間が足りない以上、効率よく、集中して勉強しないと。)


苦手な夜更かしも、ある程度しないと間に合わない。


そんなこんなの「苦行」の日々がようやく過ぎ、1週間ぶりにグラウンドに集合した私たちの顔は、みな一様に晴れやかだった。


「終わっちまえば、こっちのもんだ。」


「そうそう。結果なんか、もうどうでもいい。」


「さぁ、今日からはまた練習だ。」


先輩たちがそんなことを話しているのが聞こえて来て、思わず笑ってしまった。


そしてこの日、練習スタート前に、石原監督は私達全員を前に、こう切り出した。


「中間考査も終わり、いよいよ夏の県大会予選まで、2ヶ月を切った。」


そう、全国高校野球選手権、夏の甲子園の出場権を掛けた予選が近づいて来たのだ。47都道府県の内、東京と北海道を除いた45府県は代表になれるのは、たった1校。


特に参加校数の多い神奈川は勝ち上がるまでに7戦ほどを戦わなければならない、全国有数の激戦区とされている。


「1年生が入部して、新チームになってから、そろそろひと月。これからの練習はより実戦的なものとなり、週末の対外練習試合は毎週実施して行く。」


そっか、毎週末練習試合か。大変になるけど、仕方ないよね。


「俺たちの目標はただ1つ。打倒御崎高校、そして、神奈川代表として、甲子園に行くことだ。その目標に向けて、全員が心を1つにして、頑張って行くぞ。」


「はい!」


監督の言葉に、私たちは力強く答えていた。
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