家族なんてもん、俺にはいない。けど、組の連中とおやっさんのことだけは、大切に思っていた。

 普通の世界じゃ生きられない人間ってのは確かにいて、周囲からどう思われようと、俺たちは俺たちのやり方で金を得て、暮らしを成立させていたんだ。

 それが道徳的に〝悪〟だったとしても、関係なかった。生きていくためには、必要なことだった。

 ……しかし、そう思っていたのは存外俺だけだったのかもしれない。

 獄中の俺に何度か面会に来たおやっさんの話では、組を解体した後、とくに罪を犯していない元組員や、刑期を終え出所した元組員たちをまっとうな職に就かせることに奔走しているのだという。

 俺が必要だと思っていた『勝又組』という居場所は、俺が出所する頃にはすっかりなくなっているのだ。……この先どうやって生きていけばいいのか、皆目見当もつかない。

 シャバに出たところで結局むしゃくしゃして、また罪を重ねて捕まるのではないだろうか。

 そんな思いは刑期の終わりが近づいてくるにつれ強くなっていたのだが、そんなある日、予想外の人物が面会に訪れた。