王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
プロローグ~とある伯爵令嬢のモノローグ~
 最近、王都が騒がしい。イートン伯爵令嬢クロエは、ため息をつきながら窓の外を眺めた。
先日、この国の王太子であるバイロン・ボールドウィンが毒殺されるという事件があった。その犯人だと目されているのが、兄の親友であり、バイロンとは異母弟にあたるアイザック第二王子なのだ。

 アイザック犯人説を強硬に訴えているのは、バイロンの母方の伯父にあたるアンスバッハ侯爵で、擁護に回っているのがナサニエル国王陛下だ。
証拠も不十分であり、追加調査が行われているため、現在アイザックは王城の一室に軟禁状態になっている。

こうなると、アイザックを旗頭と掲げるバーナード侯爵一派は、旗色が悪い。
父のイートン伯爵も兄も、立場の悪い今の状態から脱却すべく奔走していて、最近は全く屋敷にいない。

「……おもしろくないわ」

国全体も、今は喪に服していて、華やかなイベントの類はすべて中止となっている。
貴族令嬢たちのお茶会も、自粛ムードがあるため、クロエはやることが無いのだ。

(学術院の図書館でも行こうかしら)

この国の女性は、大体がグラマースクールを卒業すると、社交界デビューし、家で花嫁修業をしながら生活するものだが、結婚する気のないクロエは、王都の最高学府・ポルテスト学術院へ聴講生として登録している。試験を受けて合格すれば、特定の単位の認定はされるし、学園への出入りはある程度自由である。
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