あなただったんだ
「ごめん。好きな子ができた」

一ヶ月ぶりにやっと会った悠也はあっさりと言い放った。

「誰?誰なの?」

「隣の課の秋川夏海(なつみ)さんだよ」

私とは全く違う、大人っぽい清楚な女性の名を悠也は告げた。私と同じタイプならいくらでも戦う覚悟だったけど。

「いつごろから・・・心変わりしてたの?」

「2ヶ月くらい前かなぁ。水族館のチケットが二枚あるから、って誘われて。ちょうど、君が優子ちゃんと久々に会うんで、ごめん、って言ったあの日だよ」

だからって・・・他の女と会う?

でも、その前からだ。毎日あった悠也からの電話が2日に一回になり3日に一回になり・・・私からかけないと話せないようになり・・・。

彼女のことはきっかけだ。そして決定打になった。

彼女のほうにも彼がいたはずだ。営業の宮田 豊。ふたりはそろそろ結婚か?と噂されていたくらいだったのに。

「それで、どうするの?」

「彼女と結婚を前提に付き合いたいと思ってる」

結婚・・・悠也と3年つきあって、一度も聞けなかった言葉。それをこんなにあっさり言わせる女がいるなんて。私になくて、彼女にあるものは何?

宮田さんは、もう知らされているのだろうか?外回りが多く、直帰の場合も多いが、翌日の月曜日、私は、

(ちょっと話せませんか?NAP CAFE で待ってます。 木原<開発部>)

という付箋を彼のPCに貼っておいた。
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