授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
第一章 黒川症候群
街を行き交う人々の装いが徐々に薄手の物に変わり、“春うらら”という言葉がふさわしい季節になってきた今日この頃。

はぁ、みんな幸せそうだなぁ……。

あの子、誰かと待ち合わせかな? なんであんなにニコニコしてんだろ、あ、そっか、彼氏とデートだったのね。うんうん、なかなかイケメンじゃない?

さっき目の前を通ったサラリーマン、なんだか急いでたみたいだけど……会議とかかな?

あれ、あの人もしかして道に迷ってる? 大丈夫かなぁ。

私は大学時代からの友人、蒲池聖子の家族が営むパン屋“ベーカリーカマチ”にふらっと立ち寄り、イートインコーナーの窓際にあるカウンター席で頬杖をつきながら、外の様子をひとりでぼんやり眺めていた。

「菜穂、なーほ! こらっ! 松下菜穂!」

「ッ!? は、はい!」

いきなり自分の名前をフルネームで呼ばれて、我に返るとシャキッと背筋を伸ばす。

「さっきからずーっと窓の外眺めて人間ウォッチング? んで、この前の面接結果どうだったの?」
< 1 / 230 >

この作品をシェア

pagetop