職場でのスリムなスーツに身を包んだ姿とは違うギャップに、ドキリと跳ね上がる心音。スーツ姿もカッコイイと思うけれど、これはコレでキュンキュンする要素が満載。

「……おはよう。ちょっと予想外な私服に驚いた。もっと子供っぽい感じだと思っていたから…」

支配人に声をかけるとすぐに気付き、私の姿を見て驚いた様だった。

支配人の中での私のイメージは、どんなに幼稚さがあるのだろう?…と考えると気持ちが沈んでしまう。

ショックを隠せずに下を向いていると支配人が申し訳なさそうに私に言い寄る。

「公休を変更して悪かったな。明日も休むか?」

「いえ、特に用事はなかったですから大丈夫です。明日はきちんと行きますよ」

「…分かった」

凹み気味な心を隠して、愛想笑いをする。

支配人は愛想笑いに気付いたのか、それとも私とは特に話題もないからか、少しの間、無言で歩いた。

私から話をかけても良いのかな?折角のお誘いなんだし、出来る事ならば沢山話をしたい。

緊張しながらも話かける決心をして口を開くと…

「し、支配人っ、」
「篠宮、」

お互いに話をかけようとしていたらしく、言葉が混じり合い、顔を見合わせる。

「何だよ、篠宮」

自分からも話をかけてきたはずなのに、私だけが話をかけてきた流れにしようとしている。

クスクスと笑いながら流し目で見られたら、まともに顔を合わせる事も出来ずに目線を反らす。

不意打ちで毒牙(色気)を振り撒くのは、心臓に悪いからやめて欲しい。

「しーのーみーや?…篠宮さん?」

「……っ」

「……篠宮?」

待ち合わせ場所は人気の少ない通りで、今は私達の周りには誰も歩いてはいない。

支配人の事が目線に入らないように下を向いて歩いていたが、ピタリと足が止まったので私も立ち止まる。

「やっぱり帰るか?」

少しだけ悲しげな表情をした支配人が小さく呟いた言葉が、私の胸の奥に突き刺さる。強引に誘ったくせに、今更…。

「嫌ですっ、帰りませんっ!」

ブンブンと首を横に振り、抵抗をして拒否をして、キッと目尻に力を入れて睨み付ける。