無気力な高瀬くんの本気の愛が重すぎる。
失恋記念日

九月中旬、秋めいて涼しくなった風が頬を撫でる。

図書委員の司書当番に当たっていたわたしは、放課後になって先生に頼まれた本の仕分け作業に没頭していた。

はぁ、疲れたぁ……。

首を回して肩の凝りを取る。

女子高生らしからぬ姿だな、なんて思いながら室内をぐるりと見回す。

シーンとしている放課後の図書室。

どうせ誰もこないだろうし、早いとこ終わらせてボーッとしよう。

うん、それ最高。

残り少ない本を手にしたとき。

「失礼しまーす」

ノックと一緒にドアが開いた。

珍しいな、放課後に誰かがくるなんて。

「あ、おーい、(たまき)ー!」

「え……?」

何気なく振り返った瞬間、目に飛び込んできたのは仲良さげに立つふたりの姿。

「えへへ、久しぶりだね。教室まで行ったら、クラスの子がここじゃないかって言うから」

無邪気に笑うのは、中学からの親友の穂波(ほなみ)

「きちゃった」

「急にごめんな。穂波がお前に会いたいってうるさくてさ」

「だって高校生になってからクラスも階もちがって、なかなか会えないんだもん」

ふたりの声を聞きながらも、視線は一点集中。

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