コンシェルジュのカウンターには、もう茅野君が来ていた。
『おはようございます、松下さん』
昨日のことは、まるで何もなかったように、笑顔で挨拶してくれた。
『おはようございます、茅野さん』
私も、あえて何も言わなかった。
今は…
このままで…
茅野君のことは、良き同僚として、これからも仲良く、仕事を頑張って行きたい。
それが、今の私の気持ち。
その時、ふと、頭に絢斗のことが浮かんだ。
今日は、休みで、絢斗がいない。
やっぱり…
寂しい。
あの顔を見たら、今日も1日頑張ろうって、そう思えるのに。
でも…
あと少しで、私は、引越して、毎日、絢斗と一緒にいられる。
あの、凛とした超イケメンの絢斗と、この私が、2人きりで暮らすなんて…
想像しただけで、顔が赤くなって、心拍数が上がる。
だけど、1人で勝手にドキドキしてるだけで、絢斗に『冗談だよ、何、本気にしてるんだ?』なんて言われたらどうしよう…