「松永さん、起きられる? 検温です」
そんな声が聞こえ、私は久しぶりにすっきりした頭で目を開けた。
窓からは明るい日差しが差し込み、すでに朝を迎えていることがわかった。
真由が生まれて以来、ぐっすりと眠った記憶がなかった私は、隣に真由がいないことが寂しくもあり、不思議な気持ちだった。

「大丈夫?」
年配の看護師さんの声に私は小さく頷いた。
その後、先生がやってきて簡単に診察を終えると、私は家に帰っていいと言われホッと安堵した。

「そこにシャワーもついているから着替えたらいいわ」
私の手の点滴を外しながら、先ほどの優しそうな看護婦さんが笑顔を向ける。

「シャワーもあるんですか?」
驚いて行った私に、看護師さんはクスリりと笑うとうなづいた。
「そうよ。VIPルームだもの」

VIPルーム?
確かに普通の病室というよりは、高級なホテルと言ったほうがいい病室を私はあらためて見る。

「あの、お支払いは下で?」
手持ちはあっただろうか? カードは使えるのだろうか?

「え? お支払いは会社へと聞いてますよ」
「そんなわけには」
そう言った私だったが、看護師さんは少し困った顔を見せた。

「それはまた会社で話し合ってくださいね。うちの病院はそう聞いてます」
そう言われてしまえば、もう何も言えなかった。

「じゃあ、準備が出来たらまたナースコールしてくださいね」
柔らかな微笑みを浮かべて、看護師さんは出て行ってしまった。