激愛~一途な御曹司は高嶺の花を娶りたい~
お見合いのお相手は
「いらっしゃいませ。重森(しげもり)さまですね」


料亭『味楽(みらく)』の数寄屋門をくぐると、若草色の着物を纏った仲居さんが、振り袖姿でガチガチに緊張している私、重森紬(つむぎ)を迎えてくれた。

ここは政治家も利用するという格式の高い料亭で、庶民の私には縁遠い場所なのだ。

しかも、着物の帯がきつく締められていて深い呼吸ができないせいか、先ほどから苦しくてたまらない。

「こちらへ」と指の先まで神経が行き届いた美しい所作で私を案内する仲居さんは、口角を上げてから口を開く。


「お連れさまはすでにお越しになられています」
「は、はい」


絶対に転ばないようにと足下ばかりが気になり、左右に広がる立派な日本庭園をじっくり観察することもできない。


こんなに余裕がない姿を見せたら、がっかりするだろうな。
まあ、それでもいいか。と頭の片隅で考えていた。

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