策士な課長と秘めてる彼女 ~出産編・育児編~
「日葵、お前をおいて行くなんて・・・。薄情な俺を許してくれるか?俺を嫌いになったりしないよな?」

O府で行われる予定の株主総会。

陽生と日葵の住むH県からは距離があるが、そうは言っても日帰り案件だ。

株の所有者の大半が、O市に本社がある真島地域開発の株主でもあり、O市開催は致し方ないこと。

もともと自立心の高い日葵なのだから、たった一日陽生と離れるだけで目くじらを立てたり不満を言うことはない。

しかし、かつて橋満家の我が儘娘に殺されそうになった過去がある。

心配性の陽生は日葵を一人にしようとはしなかった。

たとえ小学6年生とはいえ、陽生の弟らしく、しっかりものの真島勇気(11歳)を日葵の傍らにおいていくことにしたのである。

幸いにも妊娠9ヶ月、いまだ出産の徴候は全く見られない。

もちろん、陽生の母である真島真佐子53歳と真島孝明57歳も、

「陽生がいない間に大事な嫁と孫に何かあっては大変!」

と、予定していた海外視察を延期しようとしていたのだが、頑なに視察延期を固辞した日葵に負けて、勇気を日葵のそばにおくことで妥協したのであった。

「大丈夫だよ。陽生さん。勇気くんも、柊くんもいてくれるし。夜には帰ってきてくれるんでしょう?待ってるから」

「兄さん、大丈夫だよ。僕も柊くんも、しっかり日葵さんを守る。任せて!それに、毬ちゃんもいるし、ね?」

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