だぶるべっど
 今日は大学の講義を一つも入れず、一日中バイト三昧。時間は10時をとっくに回っていて、辺りはすっかり暗くなっている。等間隔に設置された街頭がやけに不気味だから、少し早歩きで帰った。

 錆び錆びのドアを押し開けると、おかえり、と元気な声が迎えてくれた。3年半付き合っている彼女だ。陽気な性格で、リビングから上半身を出して手を降ってくれている。俺は、今いくよ、と返事をして、細い廊下を通ってそちらに向かった。

 リビングは四畳半。部屋の真ん中には、白い丸テーブルが置かれている。さすがにこのスペースに二人というのは狭い。彼女と壁の間を体を縦にして通り、部屋の奥に荷物を置くと、いつもの位置に腰を下ろした。

 いただきます、と声を合わせ挨拶をする。今日のメニューは、てんこ盛りのモヤシ炒めとおまけの豚バラ肉。味付けは胡椒だけ。モヤシとお肉を箸で掴み、口の中に放り込む。そして間髪入れず茶碗を手に取り、白米を流し込む。おかわりはないので、丁寧に味わいながら食べたいのだが、残念ながら空腹なのでそうはいかない。箸は止まらず、モヤシを食べ、白米を口に入れるを繰り返す。対面の彼女は、モヤシ炒めに手を付けず、こちらを見て微笑んでいた。そんな彼女を見て初めて、箸が止まった。
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