嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
きみを振り向かせたい
 
 大人げない態度を取ってしまったと反省しながらも、コントロールできない感情を持て余している。

 杏太と食事に行くと聞かされて余裕ぶって送りだした。

 でも本当は髪を掻きむしりたくなる衝動に駆られるほどモヤモヤしたし、花帆の顔を見たら余計なことを口走りそうであえて避けた。

 仕事をしている時だけは邪念を払えると思って、無理やりにでも作業の手を休めないようにしていたのに。

 阿久津くんと楽しそうに喋っているのを目にしてからは集中力が続かなかった。

 あのふたり、あんなに仲がよかったか?

 仕事熱心のふたりだから、いつもは私語を挟まないから余計に目に付いただけ。

 そう頭で理解していても、ざわつく気持ちは静まらない。

 俺と話している時よりも楽しそうに見える。

 花帆は俺についてどう思っているんだろう。

 この前花帆の気持ちを聞くせっかくの機会だったのに、本心を知るのが怖くて突っ込めなかった。
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