新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
『砕け散った運命の恋』
 絶対に彼は、私の運命の人だと思ったの。

 再会を果たし、彼も私のことを覚えていてくれて、そして想いを通わせる。
 そんなドラマチックなラブストーリーを勝手に作って妄想しては、好きって気持ちを募らせてきた。それなのに……。

「本当にあのふたりって、理想のカップル! 幼い頃から決められていた許婚の関係とか素敵!」

 先輩から聞いた衝撃的な話。ひとめ惚れした彼と劇的な再会を果たして数時間後、脆くも私の運命の恋は砕け散ったのだ。



 おぼつかない足取りで、多くの人が行き交う歩道を進んでいく。

 時刻は十七時半過ぎ。ちょうど帰宅ラッシュの時間帯だ。

 横断歩道の信号が赤に変わり、交差点はたくさんの車が行き交う。それを茫然と眺めては深いため息が零れる。

 今日は二十五年生きてきた中で、初めて天国と地獄を体験した。

 真新しいスーツを身に纏い、ジッと信号機を見つめている私、川端(かわばた)涼(りょう)は中途採用先の入社式を終えて帰路についている途中だ。
 車が通るたびに背中まである髪が揺れ、手で押さえていると信号機が青に変わった。

 歩を進めながら、考えてしまうのは彼のことばかり。
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