彼女とのデートを終えた後、俺はさらに車で二十分、二十五階建てのマンションの地下スペースに駐車した。

エレベーターのロスタイム、ジムやフロントなど共用施設へのアクセスを考えて選んだ十階の2LDKの自宅。
ひとり暮らしには広いこの部屋へ帰宅すると、俺は先ほどまでの彼女との時間と比較して物寂しくなった。

キャメルのコートを角ばった黒いソファの背もたれに掛け、ベルトを外し、同じ場所に放る。

彼女にもらったクッキーの袋だけを持ち、コートとは対面のソファに座った。

……沙穂ちゃん。かわいかった。

見合いのときもそうだが、少し雰囲気が変わった。美砂が派手だから昔は一緒にいると控えめな印象がしていたのに、今日みたいにデートっぽい格好で来られると男としては舞い上がる。

思い出すだけでヤバい。

乙羽社長に帰宅時間を告げておいてよかった。制限がなければ、おそらく理由をつけてここに連れ込んでいただろう。

婚約者とはいえクライアントのお嬢さんに初デートで手を出すわけにもいかないし、そもそも彼女と両思いにすらなれていない。