『オトワリゾート株式会社』本社オフィス。

銀座の土地を大きく陣取った五階建ての建物は、企画部門、営業部門、広報部門、そして私が所属する総務部門など、企業の基礎的な機能が集約している。

姉は現在は広報、次に企画と経験を積んでレベルアップし、徐々に経営陣としての素養を身につけるプラン。

一方私は総務をこなしながらときどき長期でリゾート地での接客研修を受けており、それが姉よりも世間ずれをせずにいられている理由でもあった。

透さんとのデートから三日、やっと落ち着いてきた私は白いブラウスとグレーのスカートに身を包み、今日もPCに向き合う。
将来は姉のサポートをするため、現在必死で仕事の勉強をする毎日を送っている。

「沙穂さん。きりのいいところで休憩に入ってね」

総務部の上司、川澄(かわすみ)さんに声をかけられた。
線の細い三十代の女性で、こう見えて双子の男の子を育てるスーパーママ。社長の娘である私にも分け隔てなく接してくれる素敵な人だ。

「はい。あと少しで区切りがつきます」

PCの社内システムで、各営業所からあげられる予算申請に対しての理由が適切か、チェックを入れていく。小さな備品の買い換えからリゾート施設の補修、客室のリフォーム希望など金額の開きも大きく、私の承認でできるものから社長決裁が必要な案件まで多岐に渡る。

細かい仕事だけど、遠くで働く従業員さんたちの希望をダイレクトに受け、各部署を説得して決裁までもっていく、やりがいを感じる仕事だ。