冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
第四章 甘くイジワルな渇愛に溺れて
眠気が残るぼーっとした意識の中でゆるゆると瞼を持ち上げると、目の前ではルームウェア姿の宗鷹さんが珍しくまだ瞼を閉じていた。

こちら側を向いて小さな寝息を立てている彼の伸ばした片腕は、いつの間にか私の枕にされていて、キングサイズのベッドだというのにふたりの距離は吐息が掛かるほど近い。

真夜中に私が一体どんな寝相をしているのかはわからないが、毎晩のように私は自分の枕から彼の腕に移っているようで、心底恥ずかしい。

宗鷹さんは『気にしなくていい』と言ってくれるけれど、痺れたりしていないかな? といつも大変申し訳なくなる。
朝からあくびをしているのも見かけるし、正直宗鷹さんの方があまり眠れていないんじゃないかと心配になるレベルだ。

だというのに、毎晩ベッドの上で抱きしめられるのを必死に辞退する私を、彼は甘く強引にその逞しい両腕の中に閉じ込める。

「君はその隈を治すために、少しは大人しく俺に抱きしめられる努力をしてほしい」

「でも、あの……無理しないでください」
< 122 / 162 >

この作品をシェア

pagetop