モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
特製オムライスとおにぎり
そろそろシールを集めるひとが出そうになり、私は休日にマルトさんのところを訪ねた。裏メニューはもちろんオムライスだ。裏メニューとして出す前に最終確認をしようということになり、私は初めて食堂のキッチンに入れてもらった。
 ここ最近、食堂の利用数が遥かに増えたとマルトさんは嬉しそうだった。同時に、マルトさんの笑顔も増えたように思う。

「金髪の気の強そうなご令嬢さんが、青い子と赤い子を連れてよく食堂に来るようになったよ。聞けば金髪の子は名家の出身だってね。高そうなものばかり食べてそうなのに、最近はメープルシロップとバターだけのパンケーキにハマったようで、朝食も食堂で食べるようになってねぇ。きちんと毎回お礼も言ってくれるし、いい子だよ」
「ああ、それはアナベルのことね。赤髪のおだんご頭がカロルで、青髪のショートヘアーはリュシーよ。学園でもいつも三人でいたわ」
「そうなのかい。あの子たちがいると、食堂が華やかになっていいね。そうそう! 華やかといえば、すごく美形の子も最近はよく来るよ。火曜と木曜は必ずといっていいほどいるね。ほら、あの水色の髪の……」

 美形で水色の髪といえば、ひとりしかいない。

「レジスね。学園でマティアス第二王子と並ぶほど人気があったわ。ただ、クールすぎて近寄りがたいとも言われてたけど」
「あぁー……。言われてみればそうだね。愛想はないけど、いつも綺麗に食べてくれるから印象は悪くないよ。火曜と木曜にきてるってことは……あんなイケメンを虜にするなんて、フィーナも隅に置けないねぇ」

 にやにやしながら、マルトさんは肘で私の体を軽くつついてくる。

「えっ!? ど、どうしてそうなるの!」
「だって、フィーナ目当てってことだろう? ほかの日にきたときもよく周りを見渡してるし、フィーナを捜してるんじゃないかい?」
「レジスが私を捜すなんて、そんなわけないわ。もう、さっさと始めましょう!」
「あらあら照れちゃって。……青春だねぇ」

 マルトさんは私を冷やかしながらオムライス作りを始めた。
「材料ならたくさんあるから、フィーナも作ってみる?」と言われ、私も急遽オムライスを作ることになった。
 前世では料理が趣味で、いろんなものをよく作っていた。玉ねぎをみじん切りしていると、マルトさんに手際のよさを褒められて嬉しくなる。
 私の作るオムライスは、チキンライスの上にとろとろの卵を乗せるタイプのものだ。マルトさんのようにチキンライスを卵で包み込むのより簡単で、失敗も少ない。
 
「わぁ! 美味しそう! フィーナの作ったオムライスは、卵がとろとろだね。あたしのは昔ながらのオムライスって感じだけど、フィーナのは今どきのオムライスって感じだ」
「ふふ。なにそれ。私はマルトさんみたいにうまく卵でライスを包めないだけよ」
「フィーナならすぐできるようになるよ。それより、フィーナのオムライスを食べてみてもいいかい?」

 私はマルトさんにオムライスの味見をしてもらうことになった。代わりに私は、マルトさんの作ったオムライスを美味しくいただくことにする。
 ……うん。ばっちり! この前食べたときと同じ、マルトさんの人間味溢れる優しい味だ。裏メニューでこのオムライスが出てきたら、誰も文句は言わないだろう。

「フィーナのオムライス、卵がふわとろですごく美味しいよ。卵になにを入れてるんだい?」
「私は生クリームとマヨネーズを入れてるわ。そうすることで、よりふわとろになるの」

 マルトさんは「へぇ!」と感心しながら、次から次へとスプーンを口に運び、あっという間にすべて平らげた。

「なんだか、あたしたちふたりのアイディアを出し合ったらもっといいオムライスが作れる気がしてきたよ。フィーナが作る料理を食べたいひともいるだろうし、裏メニューはフィーナも調理に参加してくれたらうれしいんだけど」

 オムライスを食べ終え、マルトさんは私にそんな提案をしてきた

「そんな! 私は素人だし、マルトさんがひとりで作ったほうが美味しいわ」
「あたしの料理は食堂でいつでも食べられるだろう? フィーナはほかの課題が忙しいだろうし、少し手伝ってくれる程度でいいから。ねっ?」
「……わかったわ。やってみる」

 マルトさんに説得され、今後裏メニューはふたりで一緒に作っていくことになった。
 それからは空いてる時間に食堂に行き、キッチンでマルトさんの仕込みを手伝ったりするようになった。
 もともと好きなことだったので、マルトさんからいろんなことが学べてとても楽しい。
 ――早く裏メニューが出せたらいいなぁ。
 誰かがシールを三枚集めてくれることを、私は心待ちするようになっていた。

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