復讐目的で近づいた私をいくらで飼いますか?


「おいしぃ…」


ホクホクとしたジャガイモに、きっと高いであろう贅沢なお肉。

思えば最近、考え事を沢山しているせいであまり食べていなかった。考え事に熱中して、食を後回しにする癖はよろしくないな。

うん。そう。考え事。


ーーー考え事…?


「…お前、本当に昔から美味しそうにもの食べるよな。作った甲斐あったよ」


忘れてました。

この男への復讐のために作戦を練っていたら気づけばご飯食べずに仕事が始まる、の繰り返し。


「肉じゃがが好きって子供舌だな」


屈辱だよ…。
敵である新の手料理を素の自分で喜んで食べたことも、こんなにも気を許した姿を見せてしまったことも…。


(……いや、もしかしてこれはチャンス…?)


ピンチはチャンス、なんていう言葉を聞いたことがある。この状況を上手く利用してやろうじゃないか。

にっこりとした笑顔を浮かべて、美味しそうに、かつ上品に食べて…。


「新って料理上手なんだね。凄い…。惚れ直しちゃうよ」

「………またキモい顔。そもそも惚れてないくせに惚れ直すもクソもないだろ。」

「………………嫌だなぁ…あはは…」


(え、私の笑顔ってそんなに酷い?!)


本日2回目の『キモい』を頂きました。そもそも『キモい』なんて汚いお言葉をお坊ちゃんの新が使うことに突っ込みを入れたい。

そして庶民的な肉じゃがを作るっていう御曹司とのギャップの凄さに驚く。金持ちなら常に外食とかしてそうなイメージだけど…。


「………なんで料理するの?」

「…………食材があったから」

「普段からしてるってこと?」

「別に。」


んー。

よくわからない返答に首を傾げながら、肉じゃがを堪能する。


「……美味しい。」


はぐらかすことが上手い彼だから、あまり問い詰めても無謀だと思い、そのあとは静かに夕食を食べ進めた。


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