【番外編】好きの海があふれそう
家族
~杏光~

「陽鞠(ヒマリ)! にんじん避けないの!」



あたしの朝はなかなか起きない娘を起こし、娘にご飯を食べさせるところから始まる。



娘の陽鞠は3歳。



最近、最初の反抗期がはじまった。



毎日戦争みたいに大変だけど、家族3人、幸せに暮らしてる。



なんとかご飯を食べさせ、スカートが禁止の保育園なのにスカートを履きたいと駄々をこねる陽鞠をなだめて保育園に連れて行く。



海琉と毎日交代でこれを繰り返してる。



去年独立して店を出した海琉は、子育てのペースに合わせて店の営業時間を決めている。



あたしの方も、スケジュールにめちゃくちゃ融通を利かせてくれる会社だから育児をしながら働きやすい。



それに、社長が陽鞠のおじいちゃんだからね~。



会社は、創業時よりもずっとずっと大きくなってる。



若手の育成に一番力を入れていて、他にカメラ関連のカルチャースクールも運営してる。



カメラマンの事務所もきちんと経営して、業界の新興企業の中では1,2を争う規模。



老舗の事務所には敵わないけど、それでも肩を並べられる程度の地位にはある。



そして今あたし達は、結婚初期に住んでいたマンションからまた引っ越しをして、一戸建てに住んでいる。



子育てがしやすい街で、お互いの職場にも近いし、子供ものびのびと家で遊べて最高の環境だ。



陽鞠と手を繋いで保育園へ向かった。



何にでも興味を示す陽鞠は、何か気になるものを見つけるといちいち立ち止まるからとても大変。



11月の寒くなってきた季節なのに、陽鞠にそれは全く関係ないみたいだ。



歩いて10分くらいの距離にある保育園なのに、この好奇心旺盛な娘と一緒だと30分くらいかかる。



まあそれも可愛いんだけどね。



「じゃあお願いしますね~」

「はーい、いってらっしゃい」



保育園で娘を預け、今日も元気に働きます。



でも、お昼休みの直前、空腹と共に胃がめちゃくちゃ気持ち悪くなった。



お昼休みまで耐えて、お昼休みになった瞬間海琉が作ってくれたお弁当を開いてご飯を食べる。



あっ…なんとか落ち着いた…。



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