「――……ダメ、です……こんなこと……」

寝台に組み敷かれた清良(きよら)は、震える声で抗議した。だが睨み返したその目にはわずかに迷いが滲んでいる。

着ていたドレスはとうに脱がされ、その身を隠すのは一枚の毛布のみ。

そんな状況で襲われても文句の言えるところではないが、このまま大人しく食われてしまうわけにもいかない。

清良の目の前にいるのは、つい数時間前に知り合った見目麗しい紳士。

三十三歳にして世界中を飛び回り活躍する大富豪――ジェットセッターとの異名を持つ男だ。

一般庶民である清良が、エグゼクティブな彼と、偶然のような運命のような出会いをした。

いくつか言葉を交わしてわかったことは、ふたりの価値観がまるで違うこと。

同時に、目指す先は違えど互いに利用できる存在であること。

男からすれば清良は都合のいいリソースで、清良からすれば男は救いの手とも言えた。

「深く考えるな。儀式だと思えばいい。俺たちがこの先、ともに歩んでいくための」

今、ふたりはひとつになろうとしている。それぞれの目的のために。

――俺と結婚してくれ。愛はいらない――

この男の横暴なプロポーズが脳裏をよぎる。