カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
彼に愛などない。己の欲望を満たすため、そして自身の目的を果たすため、手っ取り早く身体を奪おうとしている。

先ほどまでの彼は冷静で、知的に話をしてくれていた。気品ある振る舞いは一見すると紳士に思えた。

しかし、今、清良を襲わんとするぎらついた瞳は、別人のように色めいている。

かといって、こんな恐ろしい彼を目の当たりにしても、魅入られてしまったかのように目を逸らすことができない。

このまま見つめ続ければ、何が起こるか容易に想像できるというのに。

本気で抗いきれなかったのは、その男の放つ強烈な魅力のせいかもしれない。

総司(そうじ)さん……」

清良がその名を口にすると、彼は柔らかな笑みを浮かべた。獲物を誘い出すかのような、甘く狡猾な微笑。

気が緩み、警戒心が解けた瞬間を狙って、彼は心の奥底に浸食してくる。

「俺のものになれ。その従順な瞳を俺に向けろ」

刷り込むように囁いて、清良の分厚い理性を丁寧に削ぎ落としていく。

その逞しく艶やかな肌に触れてみたい――女性としての好奇心が抑えきれなくなっていた。
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