カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
第一章 過ちの一夜と魅惑的な契約
清良は歌劇場の聴衆席に座り、じっとその苦痛に耐えていた。息苦しくて、今にも気を失ってしまいそうだ。

原因は、このぎゅうぎゅうのコルセットにある。

ブライダルインナーに似た硬い素材で出来ており、伸縮性は皆無。

清良のサイズよりひと回り小さいこともあり、身体にジャストフィット――もはや非人道的なレベルで食い込んでいた。

肺が圧迫されているのか、あるいは血流が滞っているのか。酸素が足りず意識が朦朧とする。

座って身体を縮めているよりは、立ち上がったほうが幾分かマシかもしれない。

じっと我慢してオペラを観劇していた清良だったが、幕間を迎える前に、こっそりと外へ抜け出した。

ここ『城ケ崎(じょうがさき)近代オペラホール』は、ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスをモデルに作られたという馬蹄形の歌劇場だ。

正式なオープンは来月で、今日は特別な招待客だけを集めてお披露目公演を行っている。

日本では唯一、エグゼクティブをもてなすために設計されたという本格的な歌劇場。

優美な彫刻が施された木製の柱は、音を最もよく響かせるオーク材でできている。毛並みのよいワインレッドのシートに、天井には豪奢なシャンデリア。

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