ポロネイア王国の公爵令嬢ペトラ・ポナンザは愕然とした。

王城の謁見の間に呼ばれた彼女へ、第一王子のルークが言う。

「ポロネイア王国第一王子ルーク・ポロネイアは、今日、この時をもって、ペトラ・ポナンザとの婚約を破棄する」

黒髪の王子から放たれる言葉に、ペトラは衝撃を受ける。

彼女は燃えさかる炎のような赤き髪を激しく乱しながら尋ねた。

「どうして、どうしてなのですか? ルーク様」

ペトラとルークは愛し合っていた。

恋愛感情を無視した政略結婚が当たり前のこの王国で。

だから、ペトラには理解できなかった。

「それはそなたがよく知っているのではないか?」

ルークの目は血走っている。

ペトラは、ルークのそんな目を見たことがなかった。

2人でいる時には絶対に見せない怖い顔だ。

「分かりません、分かりませんわ」

「この期に及んでまだシラを切り通すか。では教えてやる。汝は不貞行為を働いたのだ。この目でハッキリと見た。私だけではない。私の警護を担当している騎士達も確認しておる。あの美しき真紅の髪は、そなた以外にありえぬ」

「誤解です。人違いです。後ろ姿しか見ていないのなら、私とは」

「ふっ、そう言うと思った。だがその言い訳も通用せぬ。我々は顔も見たからだ。あれはそなたに他ならない。そなたほどの美貌を持った赤髪の女など、この世にはおらぬ。見間違うはずあるものか」