溢れる想いを青に込めて。
滲んだ想いはどこに。
ピピーッ

放課後の教室、目を閉じれば聞こえてくる笛の音。

教室を通り抜ける風と共に懐かしい塩素の匂いが鼻をかすめた。

その匂いに少し泣きそうになった私は上を向いて、涙をこらえるように目を瞑った。

私はもう泣かない。

そう決めたじゃないか、と心の中で自分を叱りながら教室を後にする。

外に出ると、笛の音がいっそう大きく聞こえた。

早く帰ろう、と小走りでプールの横を通り過ぎようとすると

「カナ!」

と、私の名前を呼ぶ、愛おしい君がプールサイドに立ってこちらに手を振っていた。

「リツ、、」

リツと目を合わせるのが怖くて、視線を下に向けながら控えめに手を振り返した。

「おい、リツ!あと1本残ってるぞ!」

と、リツを呼ぶ声が聞こえた。

リツは一瞬こちらを見て苦しそうな顔をした。

どうして、そんな顔で私を見るの。

苦しいのは、こっちだよ。

そう言いたい気持ちを抑えて、歩き出す。

「あっ、カナ、、」

リツは何か言いたそうだったけど、聞こえないふりをして親友のいる校門前へ向かう。

―いつからだろう、
私が泳がなくなったのは。

リツとの関係が変わってしまったのは。
< 1 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop