【短】キミの髪を、ほどきたかった。
世界が廻りだす

He still


浜松(はままつ)から、相模原(さがみはら)まで。

乗り継ぎが良くても、片道約4時間の道のり。
電車の中、何度も入れ替わる人の波。

でも大したことない。
彼に会えると思えば、こんなのへっちゃらなんだ。


……と、思っていたのに。


「……どうゆうこと?」

「ん、だから……うちの家賃が5万だから、5万÷31(日)÷2(人)で、810円。あとでいいから、ね?」


――――――……

「『あとでいいから』じゃねぇよ……!!」

「ぷっ……あっははははは……っ」

卒業式まで一週間。今日は最後の登校日。

(うら)らかな春の日差しを浴びながら、私は机に伏していた。
一週間前の、ある地獄を思い返しながら。

千歳(ちとせ)ってほんと、男運ないなぁ~。あぁウケるー……っ」

目を赤くして何度も机を叩く私。
その(さま)を見ながら、(さち)は失笑した。

「ウケないっつーの……つーかありえないっ!年下の、しかもまだ高校生の彼女に、日割り家賃を割り勘で払わせるって何!?」

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