冷酷御曹司と仮初の花嫁
第一章

自分のこれからを天秤に掛ける

 街の灯りは朝まで消えない場所もある。

 消えないだけであって、寝ないわけではない。

 高級と言われるその場所は、煌びやかで、そして、排他的であった。でも、そんな街が好きだと思ったのは自分の生きる道を助けてくれる人がいたから。

 商談に使われることの多い高級クラブや比較的敷居の低いキャバクラまで立ち並ぶ街に存在感を示すビルの一階にある店は、ドアだけはガラスだけど、それ以外は壁で覆われ、外から全く見えない隠れ家のような造りになっていた。それはこの店の設計をした人の拘りらしいと聞いている。

 真っ白な壁紙に間接照明とアイアンの飾りが陰影を作り、床にはテラコッタタイルが敷き詰められてある。カウンターの奥にあるキッチンには大理石の作業台もある。カウンターに五人座ることが出来、ソファ席は全部で三つ。相席は基本的にお断り。

 こだわりのある元高級クラブのママが経営するカフェだった。テーブルもソファもママの影響で高級感があるもので揃えられ、お気に入りの海外メーカーの物であるだけあって、値段は張る。店が開く前に、座って勉強をしていることもあるけど、インターネットで同じソファを見て、その値段が私のお尻に敷くには高価すぎることを知った。

 見た目はどこにでもありそうなソファでも座り心地は抜群にいい。インテリアともマッチしていて、この店の設計から拘ったというママのセンスに脱帽する。

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