可愛くないから、キミがいい【完】
7.堕天使ディストピア










和泉しゅうからの誘いのメッセージもなく、
久しぶりに家でのんびりするはずだった放課後。


マユとミーナと話しながら帰る準備をしていたら、上機嫌のなほちんが教室に入ってきた。


なほちんが上機嫌なときは、男の子絡みか、食べ物のことで何か嬉しいことがあったときのどちらかである。


今日はどっちだろうと思いながら、「なほちん、どうしたの?」と声をかけたら、なほちんは高くあげた手を左右に揺らした。

なほちんの手には、四枚の長方形の紙が握られていて、それが、ひらひらと横に揺れる。ドーナツのイラストがちらっと見えた。

どうやら、後者のようだ。



「同じクラスの寺田に、ドーナツ屋の割引券もらっちゃった」

「ええ、寺田君?」

「そう! バイト先の女の子からもらったらしいんだけど、ドーナツ嫌いらしい!で、隣の席の私にまわってきたというわけよ」

「絶対その女、寺田に気あるじゃーん」



ミーナがリュックをかついで、ニヤッとする。


確かに、気があるのかもしれないけれど、ドーナツの割引券で気を引くなんて、たぶん恋愛偏差値は低めなんだろうなあと分析しながら、私も頷いた。





< 251 / 368 >

この作品をシェア

pagetop