先生がいてくれるなら②【完】


「でもさ、立花さん。せっかくあれだけ速いなら、なんで高校では陸上続けなかったの?」

「えっと、そもそも中学の時も、陸上部にはいるつもりじゃなかったから……」

「え、あんなに速いのに?」


「んー。中学の時は海外の女性テニスプレーヤーに憧れて、硬式テニスやりたかったんだよね。でも中学には軟式しかなくて」


私たちの話をじっと聞いていた先生だったけど、私がテニスの話題を出した時にわずかに反応した気がする。


──気のせいかな?



「うちにも女子硬式テニス部、あるよね? 入らないの?」

「あ、入ってたけど、諸事情あって辞めました」

「……ごめん、聞かない方が良かった話題だったら謝るね」


話題を振った部長の川原君が、少しばつが悪そうな表情で頭を下げる。


こう言う所、他の部員も同じでみんな素直で優しいんだよねー。


「あ、大丈夫、気にしないで。そう言うんじゃないから」


私がにっこり笑って答えると、全員がほっとした表情になる。



最初、藤野先生に数研のマネージャーをやれと言われた時はどうなる事かと思ったけど、今では数研でみんなと話してる時が一番癒やされる気がしてる。


確かにみんなコミュニケーションが得意な方では無いけど、一度仲間だと認識すると、こうやって屈託無く話してくれるし、何よりみんなとても優しい。


理数科目がどちらかと言うと苦手な私に対しても、本当に我慢強く教えてくれる。



ありがたいな。




数研部員のみんな、心から、ありがとう────




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