その手をつかんで
「彼女の父は、彼女の故郷で公務員をされているそうです」

「なるほど、公務員ね。普通のおうちなんだね」


塚本さんは父の職業をバカにしたように言い、私を上から下までじっくりと見た。品定めされたようで、気持ちが悪くなる。

塚本さんは意地悪そうな笑みを浮かべて、言葉を続けた。


「どうりで初々しいはずだ。こういう場は慣れてなさそうだね。無理しないようにね」


蓮斗さんは私の腰に手を置いて、ニッコリと笑みを浮かべたが、一瞬にして固い表情に変える。


「はい、ご心配ありがとうございます。彼女に不躾な視線を向けられないよう、私が守ります」

「ほお、立派な心がけだね。では、また」


塚本さんは蓮斗さんの険しくなった表情にたじろいで、離れていった。

私はホッと胸を撫で下ろすが、この後も同じような質問を繰り返されそうで気が重くなる。

ドレスアップして、弾んでいた心がどんどん沈んでいく。


「明日花、嫌な思いをさせてごめんね」

「いいえ、蓮斗さんが悪いんじゃないので。でも……私から離れないでください」

「もちろん」


今ここで頼れるのは、彼だけだ。
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