メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
いつも出店している広大な公園のハンドメイドマーケット。今日は土曜日なのに人が少な目だ。日中はまだまだ30度を超える上に、にわか雨が降る予報だからだろうか。

作品を並べたレジャーシートにあぐらをかいて空を見上げると、大きな綿菓子のような積乱雲が広がっている。こういう時いつも思うのだが、もし雲が綿菓子だったら降ってくる雨は甘いに違いない。でもきっとベタベタしていて大変だろうな───こんな尖った(つら)した俺がこんなメルヘンなこと考えてるなんて、自分でも引くわ。

しばらく雲を見てから視線を元に戻すと、いつの間にか店の前に中学生くらいの女の子がしゃがみこんでいて、ものすごく真剣に作品を見ていた。

ふんわりとウェーブがかかった胸下まであるピンクブラウンの髪に細いレースのカチューシャをつけ、童話の森にでも住んでいそうなノスタルジックな服装をしている。

ベージュのブラウスにブラウンのビスチェワンピースを重ねたようなドッキングワンピース。長いスカートの裾から数cm上にはベージュの細いライン。

子供がピアノの発表会で履くような黒いラウンドトゥのワンストラップシューズを履いている。しゃがんだ膝の上に本を抱えているのかと思ったら洋書を模したポシェットだった。

───こいつ、この本から出てきたんじゃないだろうか・・・。は、またメルヘンなことを・・・。

しかしそう思ってしまうくらいにファンタジーな雰囲気をまとったやつだった。
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