幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜

闇の中の光

左腕は、幸い骨や筋肉には異常がなく、手当をすれば記憶の端に追いやられそうだったけど、あのゾッとする体験はしばらく頭から離れなかった。


美保さんは何をやっても上の空のあたしを気遣ってくれて、昨日は5時の鍵の返却がある前にあたしを家に帰らせてくれた。


藤原も用事があるとかで家まで送ってくれて、乾いた心に優しさが沁みた。


あたしの腕を掴んだ“何か”は、一体なんだったんだろう。


異常は確実に酷くなっている。


あたしたちがやっていることに、意味はあるんだろうか。


翌朝、学校へ向かう通学路でそんなことを考えた。


でも、どれも答えが出ないことばかりで、あたしは思考を振り切るように生徒会室のドアを開けた。


「おはようございまーす」


「おはよう」


「おはよう……って、はるちゃんもういいの?今日くらい休んでもよかったのに。雅くんも今日は休むって」


「え!藤原休むんですか?あいつ怖気付いたんじゃないかな」


「なんか、用事があるみたいよ。詳しくは教えてくれなかったけど」


あの人嫌いの藤原に用事?


さてはゲームの発売日だな。


あいつがゲーム以外で動くのなんて考えられないもん。


あたしはうんうんと頷いて、机に鞄を下ろす。


やっぱり冷房の効いた部屋っていいな。
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