過保護な君の言うとおり
この先地獄ゆき






 私が小池と図書委員の当番をしていた時、一番会いたく無い人物がやってきた。



私を見つけたその人は、一直線にこちらに向かって手を振る。





「玲。久しぶり、会いたかったよ……」




 私のひとつ上の先輩。

そしてトラウマの相手、『三島 洸』は人の良さそうな笑みを浮かべる。



私は怖くなった。


もう終わったと思っていたのに、まるで、続きを始めようとするみたいに微笑みかけてくるから。




「本を借りないなら、話しかけないで」



「あれえ? ずいぶん冷たくなったねえ、玲。もしかして俺との思い出を忘れちゃってるのかなあ。あんなに楽しかった思い出を」



「楽しい? ……なにを言ってるんだ」




 私がそう言うと、洸はクスクスと喉を震わせて笑った。その笑みが悪魔じみていて、恐ろしい、まさに恐怖そのものだ。




「だ、大丈夫? 宮代さん」


小池が私の様子に気づき、声をかけてきた。


「……問題ない」


私は正気をかろうじて保っていたが、本当は誰かに泣き付きたいくらいだった。



呼吸が次第に早くなっていく。



「大丈夫には見えないよ……」小池が戸惑いながら私の背中をさすってくれる。



< 67 / 119 >

この作品をシェア

pagetop