異世界もふもふダンジョンごはん~クールな騎士に一途に愛されて、満腹ライフを堪能中~
序章
エナガ亭は、勇者街道と呼ばれる辺境へと続く道の途中にある丘陵地帯に、ぽつんと一軒建っている。

この勇者街道は、特に有名な観光地があるわけでもなく、大きな街に続くわけでもない。丘陵地帯には初心者と言える冒険をはじめたばかりの者が狩りの獲物とする大鼠や野犬、野生種の羊や大兎がのどかに草を食むような風景が広がっているが、それを狩りの獲物とするような人もいない。狩人でも冒険者と言われる人々でも、狩り場への行き帰りでも危険が伴う昨今、わざわざ遠出して草原の大鼠を狩ったとしても、金にもならなければ腕を磨くことにもならない。

そんな人の往来のなさそうな場所に一軒だけ建つこのエナガ亭だが、店の看板には、こんな文章が書かれている。

『エナガ亭ダンジョン挑戦者募集中。ダンジョンで出たアイテム、食材すべて高額査定買い取り中!』

はじめて見た者すべてが二度見するその看板は、エナガ亭の三階建ての大きな建物の正面に掲示されている。

その看板を見て、周囲の風景を見渡し、そして再び看板に目を向ける。そうやって思わず確認するほど、この周囲には何も無いのだ。

一体どこにダンジョンがあるのか。それは屋内に入り、受付に向かって初めて分かることになる。
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