クール王子はワケアリいとこ
皓也のいない二日間


 日が落ちてきて、水色だった空が少しずつ橙色(だいだいいろ)に変わっていくのを遠くに見ながら、わたしは帰り道を一人で歩いていた。

 てくてくと、ただ足を動かすだけ。
 そうしていると少しは落ち着いて考えられる様になってきた。


 皓也が狼に変身してしまったこと。
 皓也がヴァンパイアだったこと。
 淳先輩達がハンターだったこと。


 色々あったことを少し整理してみる。

 皓也が狼に変身したことは安藤先生たちも分からないって言ってたし、今わたしがあれこれ考えた所で何かが分かるわけじゃないから置いておく。


 淳先輩達がハンターだって事は最初は何の冗談? って思った。
 でも皓也がヴァンパイアだって理解してからはむしろ()に落ちる事が多かった。

 思えば淳先輩も安藤先生も、変な時期にこの学校に来た。
 淳先輩は四月も半分くらいたってから。
 安藤先生は九月に産休予定だった先生が急遽(きゅうきょ)入院することになったから来た代わりの先生。

 今年度初めからの転入が引っ越しかなんかのために遅れただとか、妊娠中の先生が急遽入院になったりだとか、一見納得できる理由があるけどよく考えてみたらおかしすぎる。

 元々決まってた転入ならあの加野さんが事前に知らなかったなんてありえないと思うし。
 つわりも大したことないって言っていたらしい三波先生が突然入院なんて。
 妊娠中のことは詳しくないから絶対にありえないとは言えないけど、何だか都合が良すぎる。


 ハンターって人達がどれくらいいて、どんな組織なのか分からないけど、何らかの作為(さくい)を感じた。



 皓也がヴァンパイアだったって事は……。

 オルガさん、知ってたんだよね?
 やっぱり、もしかして……オルガさんもヴァンパイアって事なのかな?
 皓也のお母さんだし、そう考えるのが普通だよね。

 でもそれ、叔父さんは知ってて再婚したのかな?


 それも、聞いてみないことには分からない事だった。

 思わず眉間にシワを寄せる。


 整理してみようと考えたけど、疑問が増えるだけだしなんだかモヤモヤした気分になった。

 もう考えないようにしよう!


 そうは思ってもやっぱり今日のことを考えてしまう。


 何で皓也と同じ家に住んでるって事を知ってるか、淳先輩に聞こうとしただけだったはずなのに……。


 淳先輩達がハンターで皓也がヴァンパイアだって知らされて。

 皓也に血を舐められて……それから……っっっ!!


 順番に思い出していったら、手を舐められた事とかその後の事とかも思い出してしまった。
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