【極上の結婚シリーズ】ママになっても、御曹司に赤ちゃんごと包み愛されています
好きだからそばにいたい
その夜もその次の夜も、いっちゃんは仕事終わると毎晩のように私と泉のもとに通ってきた。

おじいちゃんに妻問婚なんて言われたせいか、それが頭にちらついて、私はなんだかきまりが悪かった。

「平日は泉くんが眠っている時間にしか来られないから寂しいな。これじゃあ名前も覚えてもらえない」

今夜もやってきたいっちゃんは、泉のいる寝室から嘆きながら出てきた。

「しかたないよ。泉は八時までには寝ちゃうし、いっちゃんは仕事なんだから」

私はリビングでいっちゃんにマグカップを差し出した。

いっちゃんは毎晩、着いてすぐに泉の寝顔を見に行き、それからコーヒーを一杯飲んで帰っていく。

手ぶらで来るのは気が引けるのか、いつもケーキやお菓子を持ってきてくれるけれど、毎回その量が多すぎた。月火水木と続き、私は昨日とうとう、できれば日持ちのするものを少しだけにしてほしい、と申し出た。そんな明け透けなことが言えるのは、長い付き合いならではだ。

すると金曜日の今夜はかわいらしい紅茶缶だった。フランスの老舗紅茶ブランドのもので、柑橘類が加わったセイロンティーだ。

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