狼くん、ふれるなキケン!
すらっと縦に長いシルエット。
髪色は……グレー?
一瞬、きょとんとしたけれど。
「あっ」
切れ長の目。
ツリ目気味で、眼光がちょっと……いや、かなり鋭い。
ほりが深くて目鼻立ちが特徴的で、うーんと、言い方がアレだけど、コワモテという部類に入ると思う。
そして、その特徴的な顔立ちは。
「────狼、くん?」
もしかして、が確信に変わる。
きっと、じゃなくてぜったい、そう。
ひとときも忘れられなかったんだもん。
間違えるはずもない。
近づいてくるそのひとに、今度こそ声を張ってお腹の底から。
「狼くん!」
「……」
すたすたすた、と物凄い早足。
いや、早歩きに見えるけれど、足が長くてリーチが大きいだけかもしれない。
────じゃない、注目すべきはそこじゃくて!
すたすたと、彼は私の真横を振り向きもせずに、通り過ぎたのだ。
完膚なきまで、完全なスルー。
「っ、あの! ちょっと待ってください、聞こえてますよね!?」
どこからそんな勇気が湧いてきたのかはわからない、けれど。
思わず、彼のシャツの裾を引っ掴んで、遠ざかっていこうとする背中をその場に縫いとめる。