翠玉の監察医 法のあり方
「はい」

蘭をはじめゼルダたちも返事をし、それぞれデスクに戻る。圭介も蘭の隣に腰掛けた。

今日の午前中に行われた解剖の報告書を真面目に書く蘭の横顔に、圭介は胸を高鳴らせながら自分の仕事をこなすのだった。



由美子のひき逃げ捜査が始まって数日後、桜木刑事が考え込んだ表情で世界法医学研究所にやって来た。

「桜木刑事、どうしたんですか?」

お茶を出しながらマルティンが訊ね、部屋にいる全員の目が桜木刑事に集まる。桜木刑事は仕事以外の話をする時はいつもどこか明るいからだ。こんな彼を見るのは初めてで、蘭の仕事の手も止まる。

「実は……由美子さんをひき逃げした人物が見たかったんだ」

暗い顔で言う桜木刑事に対し、ゼルダは「よかったじゃないですか!これで解決!」と明るく笑う。しかし、桜木刑事は変わらず考え込んでいる顔だ。蘭の頭にある考えが浮かぶ。

「由美子さんをひき逃げした人物が警察関係者だった、ということですか?」
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