マンションへ着いて、ふたりが玄関の扉が閉まった途端、隼世さんは背後から「菜々花さん」と名前を呼んだ。

返事をして振り向く間は与えられずに、彼は突然、私の体を後ろから包み込む。

「わっ……」

足が浮き、ヒールがコロンコロンとどっちも脱げた。縦のまま太ももの辺りを持ち上げられ、彼より高い場所に頭がくる体勢で抱き上げられているのだと自覚をすると、あまりの恥ずかしさに足をブンブンと振った。

「あ、あのっ、私、重いですからっ」

私の抗議になにも答えてくれないまま、彼は片手で自室のドアを開け、壁際の一角に大きく広がるクイーンサイズのベッドに、私を落とす。

「きゃっ」

落とされた衝撃でポヨンと背中が弾み、それが弱くなってやがて弾まなくなった。

パチンと目を開けると、そこには知らない部屋の天井があるだけ。そうか、私は同居をしていたとき、この部屋に入ったことがなかったのだ。

初めて寝室へ入れてもらえた。漠然と理解したとき、ギシッとベッドがさらに揺れ、仰向けの視界に、隼世さんが現れた。

えっ……。

思わず固まったのは、彼が膝をついて私の上にまたがり、ジャケットとネクタイを脱ぎ捨てたからである。