半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 アサギが、地面にそっとリリアを下ろした。ふわふわとしたドレスの裾の形をチェックして、飾りのリボンの形も整え直す。

 後ろで草を踏む音がした。目を向けてみると、魔法を解いてサイラスが地面に降り立っていた。どうしてか、苛々した様子で眉間に皺が寄っている。

「何よ?」

 リリアも仏頂面をして、そう尋ねた。

「十五歳にもなって、恥ずかしくないのか婚約者殿?」
「ちょっと待て、結婚の予定もないのになんで『婚約者殿』なんて言い方をされなくちゃならないのよ。腹が立つから、やめてくれる!?」

 普段あまり婚約者なんて口にしない癖に、ちょいちょい使われるたびに嫌味ったらしくて苛々するのだ。

 するとサイラスが、ますます仏頂面になった。

「俺が腕を広げたら、お前は飛んでくるのか?」

 突然何言ってんだこいつ!

 唐突な質問で、リリアは意図が全くつかめなかった。サイラスは、先程のアサギのやつと言わんばかりに、ちょっと腕を広げて見せてくる。

 私が、こいつの腕の中に? え、なんで? そもそも、そのシチュエーションがありえないでしょう?
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