リリアの頭の中は、疑問符でいっぱいだった。

 あまりにもじーっとサイラスが真剣に見てくるので、ひとまず、なんのたとえか分からないけど答える。

「んなわけないでしょ!?」

 思わずアサギの腕を取って、父と合流すべく会場へと向かい出す。

 でもこの際だ。先程も令嬢達の遠巻きの嫌味がストレスになったのを思い出したリリアは、ビシリとサイラスに指を突きつけて告げた。

「言っておくけどッ、私はあんたとは結婚なんてしないんだから、とっとと魔力を完全にコントロールするか、あの取り巻き令嬢の誰かと婚約し直して」

 すると、サイラスの秀麗な眉がピクリと反応した。

「へぇ。じゃあお前は、どこかの誰かと結婚するってことか?」

 サイラスのまとう雰囲気が、冷やかさを帯びた。

 きっと嫌味でそう言っているのだろう。分かっているくせに性悪な王子だ。リリアは、ぷいっとそっぽを向くと、アサギをぐいぐい引っ張る。

「うっかり放電する〝化け物令嬢〟を妻にしたい人なんて、いるのかしらね」

 リリアは、売り言葉に買い言葉の勢いで言い返すと、そのままアサギを連れて会場へと戻った。


 自分で口にしておきながら、リリアの気持ちは沈んだ。

 好きよと誰か言ってくれる人がいれば、それだけで世界の見方が変わるだろうにと、我ながら女々しくも思ってしまった。