お騒がせな王都の〝あやかし大騒動〟から数年後――。

 天孤であるオウカ姫の娘は、夫のレイド伯爵のもとですくすくと育ち、今年で六歳になった。

 名前はリリア。母譲りの大きな金の瞳に、父親譲りの柔らかな薄金色の髪。顔立ちは幼いながらに、美しい母と、元気で精悍な父を足して割った可愛らしさがある。

 ――のだが、将来さぞ美人になるだろう、という儚い雰囲気も台無しだ。

 今、リリアは、大変苛々していた。

 自室で授業を受けている彼女は、唇をへの字にして思いっきり眉を寄せ、淑女あるまじき表情と態度で不満を露わにしていた。
 
 彼女は勉強が嫌いである。部屋でじっと勉強を受けているのは苦痛で、そんなことをしているより父であるレイド伯爵、ツヴァイツァーと畑仕事をしていたい。

「いいですか、姫様。ご令嬢たるものマナーは大事です。はいっ、まずは足をテーブルに置かない! そこは勉強するための机ですからね? それから、変な風にだらしなく座らないでください、あと男性みたいに腕も組まない!」