すてきな天使のいる夜に
♯1 現実
ーSide 沙奈ー



カーテンの隙間から、太陽の光が私の顔を照らすように差し込んでいた。




枕元に置かれた携帯のアラームで目を覚ました。



ゆっくり体を半分起こしてから、クローゼットに飾られた制服に目をやり高校生になったことを改めて感じていた。




新しい制服に身を包み、兄達のいる下へ降りた。




「沙奈。おはよう。」




「おはー!やっぱり、その制服似合うな。」




そう言いながら、写真をとる2番目の兄である翔太。




「翔太、あまり沙奈の嫌がることするなよ。」





そう言ったのは、1番上の兄である紫苑だった。




2人のそんなやり取りを聞きながら、私はソファーに座った。




私達兄弟は、ちょっと特別で歳も私と結構離れている。





紫苑は29歳で、翔太は28歳。




そして、私は今年で16歳になる。





高校生に上がり、やっと大人になれたみたいで嬉しかった。





けど、ここ最近は何だか体調が優れなくて痰が絡む咳がよく出やすい。




呼吸もままならないくらい、息苦しくなる日がある。



階段を降りてきただけなのに、胸が苦しい。




「それよりも沙奈。




今日こそは、病院に来いよ。




最近、咳もしてるし何だか顔色もよくないから。」




紫苑と、翔太は医者で私の体調の変化にはすぐに気づく。





だけど、病院は嫌いで何回か行こうとは思ったけど、その度に足が震えて行くことができなかった。





けど、その事は2人にちゃんと話していない。





「今日はちょっと。入学式もあるし部活見学とかもあるから。」





「沙奈。紫苑の言いつけは聞いておいた方がいいぞ?



もし、1人で行くのが辛かったら俺も時間とって一緒に話聞きに行くから。」





「なぁ、沙奈。



もしかしてお前…。」





紫苑は真剣な表情をして、私の気持ちの何かを悟ったかのように私の隣に腰を降ろした。




病院に行くことが足が震えるほど怖いだなんて、小さい子どもみたいなことが言えなかった。




紫苑にこれ以上何かを悟られたくない。




私の腕を掴んだ紫苑の手をそっと離し、ソファーから立ち上がった。






「私、そろそろ学校行くね」




半ば強引に、紫苑との話を打ち切りリュックを持って急いで家を飛び出した。
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