許す事ができるの?

···律


あれから母とは本当に
連絡が取れていない。

いや、自分は本当は
軽く考えていた。
あ~あは、言っても親だから····と

だが、母は、携帯を替え
引っ越しをしていた。

自分の考え方の幼稚さに···甘さに····
やっと気づいた。

直ぐ、会社を辞めても
父からの圧力がかかると思い
我慢してきた。

だが、この所、父の容態が悪く
父と父の正妻との間に出来た
息子が社長となる。
次男が副社長となるはずが
父が俺に副社長となるように言ってきた。

俺は、なるつもりはない。
父には、悪いが
良い機会だから水島建設を辞める。

時間がかかりすぎてるが····

この五年の間、何度も辞表を出した。

だが、父から母の事を脅され
「行った先々にも妨害をする。」
と、言われた。

まして、あること無いことを
でっち上げて週刊誌等に
売り込むことなんかを
躊躇する人ではない。
一人で叩きあげてのしあがってきた
人だから。

友人が立ち上げた会社から
誘われていたが
友人に迷惑をかけられずに
我慢して、我慢して、堪えてきた。

戸川先輩からも
何度もアプローチがあった。

だが、父とも関係あるような人間と、
ましてや恵を追い込んだような人とは、
絶対にあり得ない。

のらりくらりと
うまく逃げ回る
父と繋がっているはずだから。

父に呼ばれて病院の帰りに
恵に似た人を見て
« 恵 »と声をかけた

まさか、本当に本人とは·····

恵は、変わらずに綺麗で
髪の色素が薄く
茶恵の長い髪を
ハーフアップにして
バレッタでとめていた。

身長も高い恵は
いつも颯爽としていた。

「ママ、どうしたの?」
と、言う声に
恵は、女の子の目線に座り
「なんでもないよ」
と、言うと
話しかけるなオーラをだして
俺に目をむけ
わずかに頭を下げた。

その目は·····関わるな。
その人と····まだいるの?
と、呆れたような
嘲笑うような
冷たい目だった。

だが····ママっ?····
恵は、再婚したのか·····?·····
考えていると
「専務、急ぎませんと。」
と、戸川に言われて
「わかっている。」
と、答えた。

その時の戸川先輩の顔を見て
いなかった事を
後に後悔することに。
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