LOVE and DAYS…瞬きのように

捨てられないもの


数日間、閉ざされていた部屋。

健吾のお父さんが合鍵で開けると、中の空気は不気味なほどひんやりしていた。


「ここに来れば、何か手掛かりがあるんじゃないかと思ったんだが……まさか君がいるとは驚いたな」


健吾のお父さんが淡々と言った。


驚いたのはあたしも同じ。

今、もっとも顔を合わせづらい人のひとりに、こんな場所で会うなんて。
 

だけど不思議と怖くはなかった。

あたしの中の何かが、吹っ切れたからかもしれない。
 

そっと和室に入るあたし。

そして目的の物を見つけ、用意してきた袋に入れた。
 

和室のすみには思い出の、七夕の笹もあった。


『どうかいつまでも、健吾と一緒にいられますように』
 

あのときひそかに抱いた願い事は、今も変わらない。

だからこそ、これ以上逃げちゃいけないんだ。


< 379 / 580 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop