料理男子、恋をする

男の勝負




これ以上時期が遅くなると時間を取れなくなると思い、佳亮は薫子の部屋を訪れた。薫子は笑顔で出迎えてくれて、佳亮の話をちゃんと聞いてくれた。

「……という訳で、僕ちょっと、望月さんとお話して来ようと思てるんです。望月さんのお宅を教えて貰えませんか?」

しかし薫子は佳亮と望月が話をするのを嫌がっているようだった。これは自分と望月の間の話で、もう終わった話だから、とやんわり断られる。

「……でも、仮にも婚約者の方が居らはって、僕が何もせずに横から薫子さんをとってしまう訳にはいきませんから……」

せめて佳亮の気持ちを聞いてもらって、望月の気持ちと折り合いをつけたい。薫子の家族に認めて貰うには、先ず望月と話し合わなければならない。

「……じゃあ、私が付き添っては駄目? 望月さんがどんな方法で佳亮くんを拒もうとするか、分からないわ。私が間に入れば……」

薫子の言葉に佳亮は苦笑する。

「薫子さん。薫子さんのことで男同士の話をするんですよ? 薫子さんが居て良いわけないでしょう?」

そう言うと薫子は落ち着かない様子だった。でも、とか、だって、とか、兎に角歯切れが悪い。……まあ、親が認めた婚約者と、小さな会社の平社員の佳亮では、比べるまでもなく彼が有利だ。それでも気持ちは負けないと佳亮は思う。

「いずれ、薫子さんのご両親にも納得してもらわんとあきませんし、望月さんに納得いただけてへん今の状況は良くないと思います」

説き伏せるように言うと、薫子は黙った。決して楽観的に笑ってくれない所を見ると、佳亮の分が悪いと思っているのは明らかだった。

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