廓の華
夢幻〜むげん〜


「すごいですねぇ。この万華鏡も、からくり箱も、とても綺麗で見ていて飽きません」


 囲っている禿たちがわらわらと座敷で遊んでいる。久遠さまの土産は珍しいものばかりで、目を引くようだ。

 多めにもらった菓子や玩具は全てあげているが、中でも万華鏡が人気であった。


「そろそろ、これをくださったお客さまがいらっしゃるのではありませんか?」


 禿のひとりがにこりとして言った。

 彼女の言う通り、今夜が約束の満月である。久遠さまの仕事とやらの内容は全く知らないが、上手くいけば今日会えるはずだ。


「牡丹さま、なんだか嬉しそう」

「そうかしら? 地方のお話を聞けるのは楽しみだけど」

「そういうことですか! てっきり、会えるのが楽しみなんだと思っていました」


 齢八歳の少女に言い当てられてはたまらない。

 私は、あの人に会いたいのか。

 自分でもよくわからない感情に戸惑う。今までは、お客を楽しみに待つなんて考えられなかった。それが、久遠さまに出会ってからは別人のようにそわそわしている。

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