皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
全てのはじまりは遡ること、おおよそひと月前のことだろうか。仮面舞踏会の招待状が配布されてから、しばらく経過した頃のことだった。
キィン! キィィーーン!!
皇城敷地内の東の奥にある騎士団の訓練場。今日も騎士団員たちの熱き叫びと剣戟の声が響き渡る。
帝国内が平和とはいえ、騎士団の任務は用心棒、工事や施設への手助けといった、力仕事であることがほとんど。日々武術はもちろん、体力つけはかかせないことだ。
公務の無い時間帯は、俺自身も腕が鈍ることのないよう訓練所によく訪れている。
『レイニー指導のほうを変われ』
『はい!』
訓練場の入り口にて、近侍へジャケットを預け、剣を腰に備え付けたところで、こちらに気づいたカルムが駆けつけてくる。
俺はすかさず手で制した。
『カルム、訓練を続けて構わないといつも言ってるだろ。俺も指導を受ける立場だ』
俺は生まれつき身体が強い方ではなく、剣術も体術も騎士団の訓練についていくのがやっと。だからしっかり励みたい。
そんな思いで咎めていると――
『いえ――そうではなく、今回はご相談です』
『相談?』
思いもよらない返事に、ひとまずカルムとともに訓練所を後にした。